- 言語処理学会第29回年次大会(NLP2023)について
- 聴講した感想
- まとめ
言語処理学会の第29回年次大会(NLP2023)が、2023/3/13(月)~3/17(金) の5日間の日程で開催されました。
今年は沖縄コンベンションセンターでの開催で、現地でもオンラインでも参加できるハイブリッド開催となりました。筆者はオンラインでの参加となりましたが、沖縄にも行きたかったですねー。
まず、開催初日の 3/13(月)に4つのチュートリアルが開かれ、そのうち2つをオンラインにて聴講しました。
T1:チュートリアル1:音声合成は次にどこに向かうのか
- 高道 慎之介 先生(東京大学)
- 音声情報処理の基礎知識や歴史に触れ、音声合成についてあまり知らない筆者にとっても非常に理解しやすい構成になっていました。
- 最近の音声合成技術は、たとえば人間の発話する音声と音声合成によって生成された音声とが聞き分けられないほどに進んでいるようでした。
- そのような音声合成技術の急速な発展の一要因として、深層学習モデル(ディープラーニング、DNN)による生成方法が隆盛してきたということも大きいようです。
- 日本語音声のリソースが少ないなどの課題も多いようですが、これから更なる発展がありそうな分野だと思いました。
T3:チュートリアル3:医療言語処理ことはじめ
- 荒牧 英治 先生(奈良先端科学技術大学院大学)・中村 優太 先生(東京大学)
- 医療と NLP の2つの視点から医療言語処理の分野を解説する構成で、興味を引くアプローチでした。
- 実用性の面では、言語処理は画像処理より大幅に遅れている現状を知りました。エビデンスを重要視する医療業界の中で、医療従事者の解釈(バイアス)を含むテキスト情報はたとえいくら集積したとしても確たるエビデンスにはなりにくいということでしょうか。
- ミスの許されない医療現場において、こういった NLP の技術が予防や診断の手助けをするようなことは、現状だとかなりやりにくいように思いました。
- むしろ、多忙を極める医療従事者が非常に多いだろうということを想像すると、業務効率化を手助けするようなツールによって貢献できる可能性は高いなと感じました。
続いて、3/14(火)の緊急パネルセッションもオンライン聴講しました。
緊急パネル:ChatGPTで自然言語処理は終わるのか?
- 3/14(火)には、乾 健太郎 先生(東北大学大学院情報科学研究科教授・言語処理学会会長)がファシリテータを務め、5名のパネリストによるパネルセッションが開かれました。
- OpenAIによる ChatGPT の登場は非常にインパクトがあり、NLP 界隈の不安感や動揺が感じられました。また一方で、ChatGPT にできることを冷静に分析し、これからどのように言語処理研究を進めていくのかを考えていかなければならないフェーズに入っている、というような論調もあり、不安であると同時に新しい時代に入っていくようなワクワク感も感じられました。
このほかに、いくつかのテーマセッションや発表を聴講しました。
全体を通して、言語処理の研究がどこまで進んでいるのかを、その一端をちょっとだけですが、知ることができました。
会期中の 3/14 には OpenAI から GPT-4 の発表があったこともあり、言語処理界隈はさらに注目を浴びることが予想されます。GPT-4 自体は Twitter などの SNS でも連日話題で、憶測を含む様々な評価で溢れかえっていますが、アカデミックな分野や実用面においても良い刺激になるようなものであれば喜ばしいですね。
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